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宇都宮地方裁判所 昭和53年(む)432号 決定 1978年9月18日

主文

本件準抗告を棄却する。

理由

一  本件準抗告の申立の趣旨は、「原裁判を取り消す。」というにあり、その理由は別紙(一)記載のとおりである。

二  (当裁判所の判断)

一件記録によれば別紙(二)記載のとおり、本件準抗告の申立は理由がないと認められるので、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項に則り、主文のとおり決定する。

別紙(二)

一 関係各証拠により、被告人について、昭和五三年九月九日勾留にかかる各有印私文書偽造、同行使の被告事件(ただし、右勾留に先立つ逮捕・勾留の各事実は、右被告事件のほかに同種の他の被疑事実を含む。)に関し、以下の各事実が認められる。

1 昭和五三年八月二一日 逮捕。

2 同月二三日  勾留(刑事訴訟法六〇条一項二号、三号)。

3 同月三一日  勾留期間の延長の裁判(同年九月一一日までの一〇日間)。

4 同年九月四日 右勾留期間の延長の裁判に対して弁護人ら準抗告。

5 同月五日   勾留期間の延長を同月八日までの七日間とする旨準抗告裁判所において原裁判の変更決定。

6 同月八日   勾留期間の再度の延長の裁判(同月一一日までの三日間)。

7 同日     右勾留期間の再度の延長の裁判に対して弁護人ら準抗告。

8 同月九日   原裁判を取り消し、検察官からなされた勾留期間の再度の延長請求を却下する旨準抗告裁判所の決定。

9 同日午後一時五分  右決定謄本宇都宮地方検察庁に送付。

10 同日午後二時二〇分 宇都宮地方検察庁検察官加澤正樹は、起訴状に「勾留中」と表示して宇都宮地方裁判所に、被告人を各有印私文書偽造・同行使で起訴。

11 同日午後九時三五分 宇都宮地方検察庁検察官篠宮力は、宇都宮地方裁判所に「勾留状発付の申立」と題する書面を提出。

12 その後、ただし同日中宇都宮地方裁判所裁判官水沢武人は、同裁判所において勾留質問後勾留状発付(刑事訴訟法六〇条一項二号)。

二 ところで、一件記録によれば、被告人は本件の各有印私文書偽造・同行使の罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、かつ、関係人に働きかけて自己の罪証を隠滅するおそれも存するものと一応認められるところ、前記のとおり準抗告裁判所において、被告人に対する再度の勾留延長の裁判が取り消され、かつ、その請求が却下された後、検察官は、被告人を「勾留中」と表示して公訴を提起し、その後数時間を経過して後、さらに宇都宮地方裁判所裁判官に対し被告人を勾留する旨の職権発動の申立をし、同日夜同裁判所裁判官水沢武人において、在庁する被告人に対し勾留質問をし、被告人に同法六〇条一項二号に該当する事由ありとして勾留する旨の決定をし、これに基づき同裁判官から勾留状発付の手続がなされたことは明白である。

ところで右事実によれば、被告人に対する右一連の手続過程において、起訴後勾留に関する職権発動を申し立てるに至るまでの、検察官の被告人に対する身柄の取扱いにつき、いささか疑義なしとしない点もあるが、この点は本件において、被告人の在庁を前提として、職権発動によりなされた被告人の勾留の効力に消長を来たさないものというべきである。

よつて本件準抗告の申立は理由がない。

(別紙(一)は省略する。)

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